涙を拭って、園を背にした。
慣らし保育とは、親にとっての慣らしでもあるんだな。
1歳5ヶ月の栞、可愛くて仕方ない。
一瞬たりとも成長を見逃したくない、私のそばで
全ての“初めて出来た!”を私が一人占めしたい
そう思っていた私が、
子どもとは、親だけで育てていくものではないと
思えるようになったのは、保育園の先生方のおかげ。
神経質で、順番やルールにこだわりがあって
いつもと違う変化に敏感で、行事では必ず泣いていた。
卒乳も、給食での好き嫌いも、お箸の使い方も
トイレトレーニングも、全部保育園と共に進めてきた。
車なんて絶対運転しない、と頑なに通園は自転車。
電動アシスト自転車の前に乗っていた栞も
大きくなって、後部に乗るように。
妊娠してからは、自転車に乗れなくなり
ほぼ同時に引っ越し、保育園までの距離は若干短縮された。
それでも、家から園までの距離を全部
2歳の栞が歩くことは出来ず、ベビーカーでの送迎に。
全部歩きたがる栞、途中で諦めてベビーカーに乗る
それが、そのうちに全部歩けるように、だけど時間がかかる
自転車で5分の道のりを、30分かけて帰宅する毎日。
自然が豊かで、いろんな花を見て触って歩いた。
おかげで、栞は花が好きになった。
実の出産時にも、栞は保育園に居た。
朝園に送って、即陣痛が進んでスピード出産。
いつもの時間に夫が栞を迎えに行き、そのまま産院へ。
産休中も育休中も、保育園は優しかった。
その実が1歳5ヶ月になって、入園。
栞は、幼稚園に転園。
ダブル通園が始まった。
あれほど嫌がっていた車の運転も、練習した。
震える手でハンドルを握った。
栞の時ほど大変じゃなかった、実の慣らし保育。
この子は、やっぱり度胸がある。いつもにこにこ。
同時に、コロナが始まる。
緊急事態宣言。登園自粛。行事中止。
運動会、保護者なし園児のみ、クリスマス会中止。
保育園に行くことが自分の“やることなんだ”と
何となく理解している実、
そのうちに栞と一緒に幼稚園に行きたいと漏らすようになる。
幼稚園の方が行事は充実している
半年ほど、栞と実同時に通わせられる
メリットを取って、保育園を退園することにした。
一度も「保育園行きたくない」を言わなかった実が
この夏は行き渋るようになった。
コロナの心配もあって
8月は3回しか登園出来なかった。
実の保育園生活、何だったのだろう。
コロナが無ければきっと…悔しくて悲しい。
大好きな先生、やっとお友達の名前が会話に出るようになり
でも、親が参加出来た行事は保育参観だけだった。
もっと記録に残してあげたかった。
「今日は、保育園最後の日だよ。
荷物を取りに行って、先生とさよならするんだよ。
もう、保育園には行かないんだよ。
先生と、会えなくなるんだよ。」
『えぇ…?』
そう言って、私に抱きつき寂しそうな顔をした実。
久しぶりの保育園では、みんなのお昼寝タイムに
先生方が出迎えてくれた。
行き渋り、登園自粛、こんな終わり方になってしまって
先生に申し訳ない。
大好きな先生は「先生も実ちゃんが大好きだよ」と
笑ってくれた。良かったね。
栞時代からずっとお世話になった、主任の先生に
「お母さん、本当にいろんなことがありましたけど
強くなりましたね」
と言っていただいた。
大変だったこと、辛かったことばかりが思い出される。
どんなに泣きじゃくっていても
朝、先生方は笑顔で「おはよう〜、栞ちゃん。大丈夫だよ〜」
私から引き剥がすようにして、抱きしめてくれた。
「あしたは、もうせんせいあえないの?」
と聞いた実の寂しそうな顔を、ずっとずっと忘れないよ。
これから幼稚園が始まっても
保育園でのこと、心の片隅に覚えててくれるといいな。

厳しいなと思うこともあったけど
その厳しさの中で、長い間
子ども達を守ってきた保育園なんだと今は思える。
栞の3年間、バトンタッチで実の1年5ヶ月
4年5ヶ月もの間、大変お世話になりました。
本当にありがとうございました。
子ども達と共に
ママとしての私も育てていただきました。
感謝しています。
明後日からは、実も幼稚園に。
大丈夫かな。きっと大丈夫だよね。
栞、よろしくね。